心の言葉:感情編「怒り」
「怒り」とは
感情の中でも特にエネルギーが強いのが「怒り」であることは、誰もが体感的に知っていることではないでしょうか。
強いエネルギーは場合によっては行動への活力になる一方、向ける方向によってネガティブな側面が多いのもこの「怒り」の感情の特徴です。
イライラとしたり、カッとなったり、攻撃的なエネルギーが伴うことも「怒り」の感情特有の側面です。
単純に「怒り」と一括りにしても、激怒と憎悪ときくと異なるイメージが連想されるように、様々な種類が存在します。(詳しくは「怒り」に関連した様々な表現をご覧ください)
「頭に来る」「腹が立つ」「はらわたが煮え繰り返る」など、「怒り」に関連することわざにもたくさんの表現がありますね。
今回はこの「怒り」の感情を細かく解説していきたいと思います。
怒りの感情を持った時に起こること
古来、「怒り」は人の生存本能に応えるべく、「闘争」の際に体を戦闘モードに駆り立てる役割を果たしました。
そのため、何かに対し怒りを覚えるときには、神経伝達物質のアドレナリンが体内を駆け巡り、体はいわゆる「交感神経優位」の状態になります。
この作用により、心拍は上昇、血圧が上がるため、怒りを感じた時には心臓がドキドキし、体が熱くなる感覚を覚えます。
また戦闘に有効な「相手を威圧する」という効果を発揮するため、眉は釣り上がり眼光は鋭く、唇は一文字に緊張し、いわゆる「怖い顔」が自然と表情に現れます。場合によっては無意識に拳を握る、などの身体的な行動が伴うこともあります。
もともと闘争本能に火をつける役割をもつ感情であるため、この「怒り」の活用方法次第では非常に大きなモチベーションを得ることができます。
このエネルギーを活用するべきかどうかについては、別記事「怒りエネルギー」は善か?悪か?をご覧ください。
怒りには2つの特殊タイプがある
この怒りという感情には、2つの特殊タイプが存在します。これらの特別な怒りの状態については、通常の怒りとは別の理解が必要になります。
まず1つ目が、いわゆる「キレる」という状態。これは強い怒りによって脳が感情に乗っ取られてしまう現象で、非常に危険な状態であるため、通常の怒りとは別の捉え方が必要です。
そして2つ目が、怒りが定着してしまう「恨み」などの状態。
通常の感情はある特定の事象に対して都度発生するものですが、この「恨み」は特定の対象に「怒り」が定着してしまうケースで、こちらも非常に危ない状態です。
「怒りの暴走」は手がつけられない
人は大人になると通常、理性(前頭葉)が「怒りを抑えなくては」と頭を冷やそうとすることでバランスを図りますが、「怒り」は原初的な感情であるため、その度合いが一定以上に強い場合には本能が理性に勝り、冷静に頭を働かせることが困難になります。
これがいわゆる「キレる」という状態で、脳科学的には扁桃体という原初の感情(情動)を司る器官が脳をハイジャックして暴走するという事態が発生しています。
犯罪陳述などで「カッとなってしまい・・・」という言葉が出てくるように、この「キレた」状態になってしまうと人の脳は物事を理解しづらくなります。理性的な思考ができなくなっているため、感覚としてはその瞬間の記憶が飛び去り、「気がついたら信じられないことになっていた」というケースもあり得ます。
残念ながらキレている状態になった場合、本人が自ら正気に戻る方法はありません。
この暴走は長くは続かないため、時間がたてば冷静な状態に戻りますが、強制的に怒りの感情に伴った行動を止めたい場合には、必ず第三者の介入が必要になることを覚えておいてください。
そのため、「キレる」という怒りに対する最善の手段は「怒り」自体を減らすことです。
記事の後半の怒りに対する対処法をしっかりと身につけることが非常に有用になります。
もっとも恐ろしいのは「怒りの定着」
実は「キレる」という状態以上に恐ろしい怒りのタイプがあります。
それが「恨み」。
憎しみ、憎悪と言い換えることもできるこのタイプの怒りは、何かの対象に「怒りの感情が定着している」状態です。
その対象やシチュエーションのことを思い浮かべるだけで、常に怒りの感情がにじみ出てきてしまうこの「恨み」は、心にとっては非常につらい状態です。
例えば誰かに対して「恨み」をもってしまうと、その誰かを思い浮かべたり、その人に関連する対象に出くわしたりするだけでも、「怒り」の感情が湧いてきてしまいます。
「恨み」は凍りついた氷塊のようなもので、通常の「怒り」と違い時間が経てば自然と消えていく種類の感情ではありません。
その怒りの結晶を溶かすためには繰り返しの癒しが必要になってきます。
方法自体は怒りを解消するのとほぼ同じなので、こちらも後ほど解説していきます。
「怒り」の矛先
人が怒りを感じる時、その感情が「外に向く場合」と「内に向く場合」の2パターンがあることも1つの特徴です。
いわゆる「怒りっぽい」「短気」と言われるようなタイプの人々は、怒りの感情が「外に向きやすい」傾向があります。
逆に発生した怒りが内向き、つまり自分に向きやすい「自己責め」傾向の人もいます。
これは人によってだけではなく、お金については怒りが外に向きやすいが、人間関係については内側に向きやすいなど、ジャンルによって矛先が変わってくるパターンもよくあります。
この矛先がどちらに向きやすいかは、本人の中での「自信」と関係があります。
端的に言えば、自信がある場合には怒りが外に向きやすく、自信がない場合には怒りが内に向きやすい傾向があります。
しかし、「怒りを感じている」という事実自体は変わりませんので、実は根本的な対処方法は同じです。
怒り体質になっていませんか?
「怒り体質」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
怒りは一度感じてしまうとしばらくの間自分自身を苦しめる、というのは誰しもが経験のあることと思います。
「今日はなんだかイライラするな・・・」というような日を過ごしたことはありませんか。
そんな状態になっていると、普段だったら気にならないような出来事にもすぐイライラしてしまい、そんな自分が余計に嫌になる・・・
こんな悪循環に陥ってしまいます。
怒りが体から消える前に他に「怒りを感じる可能性があるできごと」に出会うと、普段の状態よりも敏感に怒りを感じやすくなります。
これが繰り返し日々起こってくると、体の中からイライラの感覚が消えない「怒り体質」と呼ばれる状況になります。
結論からお伝えすると、怒りは体質ではありません。
自分の中で怒りに対処する方法さえマスターすることができれば、改善することのできる一時的な状態です。